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広島地方裁判所 昭和50年(行ウ)8号 判決 1978年1月19日

原告

株式会社ナショナル会館

右代表者代表取締役

右訴訟代理人弁護士

相良勝美

右同

阿左美信義

被告

広島市長 荒木武

右訴訟代理人弁護士

中川鼎

右同

宗政美三

右指定代理人

丸本照美

右同

渡辺紀男

主文

一、原告の請求を棄却する。

二、訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一、当事者の求める裁判

一、請求の趣旨

1、被告が原告に対し、昭和四九年一一月二七日付で行なった同年八月二七日付法人市民税過誤納金等充当通知による処分の取消処分はこれを取消す。

2、訴訟費用は被告の負担とする。

二、請求の趣旨に対する答弁

主文同旨

第二、当事者の主張

一、請求の原因

1、原告は、パチンコ遊戯業を営む株式会社であるが、法人税について訴外広島東税務署長に対し、昭和三六年八月一日から昭和三七年七月三一日までの事業年度(以下昭和三六年度という。)の所得を五三七万九、六八二円とし、昭和三七年八月一日から昭和三八年七月三一日までの事業年度(以下昭和三七年度という。)の所得を八〇七万七、五五〇円とし、昭和三八年八月一日から昭和三九年七月三一日までの事業年度の所得を四三四万九、〇二四円として、それぞれ法定の期間内に申告を行なった。

2、ところが、右訴外人は昭和四二年六月二六日付で原告に対し、昭和三六年度の所得を一、五一一万二、六八九円とし、昭和三七年度の所得を一、八〇九万四、八四一円とし、昭和三八年度の所得を一、七五五万九、八八五円とする各増額更正処分を行なった。

3、原告は、法人税につき前項記載の各増額更正処分が行なわれたことに伴い、右各事業年度の法人市民税について被告の行政指導により、昭和四二年七月二二日、昭和五〇年法律第一八号による改正前の地方税法(以下単に地方税法という場合は右改正前の地方税法をいう。)三二一条の八第三項に基づく申告を行なったうえ、法人市民税の本税及び延滞金として別表記載のとおり各納付年月日欄記載の日に同納付済額欄記載の各徴収金を被告に納付した。

4、しかるのち、訴外広島東税務署長は法人税について、昭和四九年七月二六日付をもって前記2記載の各増額更正処分の取消処分を行なった。

5、そこで、原告は法人市民税につき被告に対し昭和四九年七月更正の請求を行なったところ、被告は右請求に基づき昭和四九年八月一五日付で減額の更正処分を行なったので、前記3記載の原告が被告に納付した徴収金は、地方税法一七条所定の過納金となった。

6、そして、被告は原告に対し、昭和四九年八月二七日付で本件過納金及びこれに対する還付加算金につき過誤納金等充当通知(以下第一次充当通知という。)をなした。右充当通知においては、還付加算金の計算期間の始期は本件過納金を納付した日の翌日とされており、還付加算金はその計算上全額で三五万七、二〇〇円(その内訳額は別表還付加算金(第一次充当通知)欄記載のとおり)であった。しかるに被告は同年一一月二七日付で第一次充当通知を取消す処分(以下本件取消処分という。)を行ない、同日付で新たに原告に対し過誤納金等充当通知(以下第二次充当通知という。)を行なったが、そこでは還付加算金の計算期間の始期を、前記5記載の減額更正処分のあった日の翌日から起算して一月を経過する日の翌日としており、合計で三万二、六〇〇円(その内訳額は別表還付加算金(第二次充当通知)欄記載のとおり)であった。

そこで原告は第二次充当通知に対し、昭和五〇年一月一七日付で被告に対し異議申立をなしたところ、被告は同年三月八日付で右異議申立を棄却した。

7、しかしながら、以下に述べるとおり、本件過納金に対する還付加算金の計算期間の始期はその納付の日の翌日とすべきであり、被告が第一次充当通知においては納付の日の翌日から還付加算金を付しながら、その後右充当通知を取消し新たに更正のあった日の翌日から起算して一月を経過する日を還付加算金の計算期間の始期とする第二次充当通知をなしたのは正当でなく、本件取消処分は右還付加算金に関する法令の解釈を誤った違法なものとして取消さるべきである。

(一) 被告の本件取消処分は地方税法一七条の四第一項四号、同法施行令六条の一五第一項一号に拠ったものである。しかし、本件過納金は、原告の申告によって確定した税額に係るものとはいえ、右申告は法人税につき増額の更正処分がなされたことに伴い地方税法三二一条の八第三項に基づき義務的に行なわれたものであり、いわば、本件過納金は違法な右増額更正処分により必然的に強いられて生じたものといえる。そして、かかる場合については、地方税法には直接明白な規定はないものともみられ実質的にみて民法の一般規定に従った理解が相当で、還付加算金の計算期間の始期を納付の日の翌日と解するのが正当である。

(二) また、仮に本件につき地方税法一七条の四第一項四号が適用されるとしても、同規定に基づく同法施行令六条の一五第一項一号はかっこ書によって更正の請求に基づく更正によって税額が減少した場合を除外しておるので、同条第一項二号が適用さるべきである。

二、被告の答弁及び主張

1、請求原因1の事実中原告がパチンコ遊戯業を営む株式会社であることは認めるがその余の事実は知らない。同2の事実中、更正処分がなされたことは認めるがその余の事実は知らない。同3の事実中被告が原告に対し行政指導を行なったことを否認しその余の事実を認める。同4の事実は認める。同5の事実中被告の更正処分が原告の更正の請求に基づくものであることを否認しその余の事実を認める。右は職権による更正処分である。同6の事実中、第一次充当通知の還付加算金の金額は否認し、その余を認め同7は争う。

2、過誤納金を還付又は充当する場合の還付加算金の計算について、昭和四四年法律第一六号による改正前の地方税法は過誤納金の生じた理由の如何を問わず一律にその納付又は納入の日の翌日を計算期間の始期としていたが、右改正後の地方税法では過誤納金の生じた原因によって還付加算金の計算期間の始期が異なることとなった。そして右改正法附則三条によれば右改正後の地方税法の規定は施行日(昭和四四年四月九日)以後に還付のため支出を決定し又は充当する過誤納金に加算すべき金額について適用し、当該加算すべき金額の全部または一部で同日前の期間に対応するものの計算についてはなお従前の例によることとされている。本件過納金は、原告の申告によって税額が確定した徴収金にして被告の職権による減額更正によって過納金となったものであるから、右改正法附則三条、地方税法一七条の四第一項四号及び同法施行令六条の一五第一項一号の規定に従って還付加算金を計算すべきものであり、これに従ってなした本件取消処分に何ら違法はない。

第三、証拠関係《省略》

理由

一、当事者間に争いのない事実

1、原告はパチンコ遊戯業を営む株式会社であるが、昭和四二年六月二六日訴外広島東税務署長から昭和三六年度、昭和三七年度、昭和三八年度の各事業年度分の法人税についてそれぞれ増額の更正処分を受けた。そして原告は、法人税について右増額の更正処分がなされたことに伴い、昭和四二年七月二二日被告に対し右各事業年度の法人市民税につき地方税法三二一条の八第三項に基づく申告を行なったうえ、別表の各納付年月日欄記載の日に同納付済額欄記載の各徴収金を法人市民税の本税及び延帯金として被告に納付した。しかして昭和四九年七月二六日訴外広島東税務署長は法人税についての右各増額の更正処分を取消した。そして右取消処分に基づき被告は前記各事業年度の法人市民税につき昭和四九年八月一五日付で減額の更正処分を行ない、そのため原告の納付した前記徴収金はいずれも過納金となった。

2、被告は本件過納金について、昭和四九年八月二七日過誤納金等充当通知(第一次充当通知)を行なったが、それによる還付加算金の計算期間の始期は各徴収金の納付の日の翌日となっていた、(なお《証拠省略》によれば右充当通知における還付加算金は合計で三五万四、九〇〇円であったことが認められる)。ところが被告は同年一一月二七日に至って右第一次充当通知を取消す処分をなし、改めて同日付で本件過納金の還付加算金の計算期間の始期を、前記減額更正があった日の翌日から起算して一月を経過する日の翌日として新たな過誤納金等充当通知(第二次充当通知)を行なった。それによると還付加算金は合計三万二、六〇〇円となった。

3、原告は、第二次充当通知に対し、昭和五〇年一月一七日付で被告に対し異議申立を行なったところ、被告は同年三月八日付をもって右異議申立を棄却する決定をなした。

以上の事実は当事者間に争いがない。

二、原告は、本件過納金の還付加算金の計算期間の始期は、その納付の日の翌日とすべきであり、これにそう第一次充当通知は正当であって、これを取消した本件処分は違法として取消さるべきであると主張するので以下検討する。

まず、右判断に先だち、第一次充当通知の右取消処分の抗告訴訟の対象としての行政処分性について以下判断しておく。地方税法一七条は、地方団体の長は過誤納に係る地方団体の徴収金があるときは遅滞なく還付すべきものとして、同還付にあたっては、同法一七条の二ないし四に従い、地方団体の長は過誤納金および還付加算金の額を算出してその支出を決定し、他の徴収金で充当すべきものがあればまず充当し、残余を現に還付すべきものとし、過誤納金等充当(還付)通知書によりその旨納税者に通知して右還付手続を履行すべきものとしている。これら一連の手続に照らしてみると、右過誤納金等充当(還付)通知によりなされる地方団体の長の処置は、過誤納金および還付加算金についての行政機関としての事実および法律上の一応の判断を前提にその具体的な還付額、還付加算金額、充当額等を算出確定して支出、充当、還付を決定する性質のものとみられ、単なる右支出のための行政事務的な手続とはみられないところであって、もとよりこれに対しては地方税法および行政不服審査法に基づく不服申立も認められていること(地方税法一九条九号同法施行規則一条の七第四号)、などからすると、右過誤納金等充当(還付)通知によりなされる地方団体の長の還付金、還付加算金、同充当に関する処置は、行政処分として抗告訴訟の対象となりうるものと解するのが相当である。

なお、地方税法一七条の四第二項二号は過誤納金の返還請求権の存在を前提としているようであるが、過誤納金の返還請求権自体は過誤納となったときに成立しているものとみられ、右地方団体の長の処置によって始めて成立するものではなく、従ってまた、右処置は権利関係の発生を生ぜしめる行政処分とはいえないとしてもこのことにより直ちにその後の具体的な確定した金額による還付請求に関する右処置の行政処分性を否定するものとも解されない、そうだとすると、右過誤納金等充当(還付)通知による右処分を取消す地方団体の長の措置もまた一個の行政処分と解することに問題はないものといえる。なお、出訴期間の点につき(地方税法一九条の一一・一二、行政事件訴訟法一四条一項)、《証拠省略》によると、本件異議申立および同棄却決定は第一次充当通知の同取消処分についてもなされているものと解することができる。

そこで、次に、前記原告の主張について検討する。

被告は、本件過納金の還付加算金の計算につき、本件は、昭和四二年六月二六日原告の法人税額について増額の更正処分がなされたことに伴い、原告は同年七月二二日地方税法三二一条の八第三項に基づき法人市民税(法人税割額)の修正の申告をなし、その後同納付をなしたものであるから、同法一七条の四第一項四号同法施行令六条の一五第一項一号に該当し、申告により納付した税額につき後に減額更正がなされて過納金が生じた場合にあたるとして、右減額更正のあった昭和四九年八月一五日の翌日から一月を経過する日の翌日である同年九月一六日から起算すべきものとし、したがって、当初の第一次充当通知に係る地方税法一七条の四第一項一号に従った納付の日の翌日からとする還付加算金の計算は誤りであるとしてこれを取消すに至っている。

なるほど、本件還付加算金の計算につきその起算日を右被告主張のごとく解することには、たしかに以下述べるような不合理性を否めない。つまり、

1、元来、過誤納金の還付加算金の起算日については、従前、昭和四四年法律第一六号による改正前の地方税法においては過誤納金の生じた理由の如何を問わず一律に納付または納入の日の翌日とされていたものであるが、右改正後においては、右過誤納金の生じた理由によって還付加算金の起算日を異ならしめることとした。すなわち、その改正規定(地方税法一七条の四第一項一ないし四号同法施行令六条の一五第一項一、二号)によると、更正、決定、賦課決定等地方団体側の処分によってその額が確定し納付、納入すべきこととなった地方団体の徴収金について過納金を生じた場合は、納付、納入した日の翌日から還付加算金を起算すべきものとし、他方、納税者の申告、修正申告等納税者側の自主的な行為によってその額が確定し納付、納入すべきこととなった地方団体の徴収金につき後の減額更正等で過納金を生じた場合は、その更正のあった日の翌日から起算して一月を経過する日の翌日等から還付加算金を起算すべきものとしている。つまり、右改正の骨子は、過誤納金の生じた原由が地方団体側の措置に由来するのか、納税者側の自主的な行為に由来するのかにより、いわばその責任の区分に応じ、本来過誤納金、同還付加算金が実質的には民法上の不当利得返還請求の関係にあるともみられるところからこれに類比する形で改正されるに至ったものと解せられ、この点に右改正の主眼もあったものとみられる。

右改正の内容を通らんとすると、次のとおりである。すなわち、まず、還付加算金の生ずる過誤納金につき、過納金(申告、更正、決定等一応納付すべき何らかの根拠―確定措置があって納付したものにつきそれが後に誤りであったという場合)と、誤納金(右何らの根拠もないのに錯誤等全くの誤りで納付したような場合)とを区分し、これらにつき、①、地方税法一七条の四第一項一号は、更正、決定、賦課決定等地方団体側の処分によって、その額が確定し納付するに至った地方団体の徴収金につき、それが後に減額更正等により過納金となったような場合、還付加算金の起算日は右納付のあった日の翌日とするものであり、②、右同項二号および同項四号同法施行令六条の一五第一項一号は、申告書、修正申告書等の提出、つまり納税者側の行為によってその額が確定し納付するに至った地方団体の徴収金につき、それが後に減額更正されて過納金となったような場合、還付加算金の起算日は右減額更正が納税者の更正の請求に基づく場合は更正の請求があった日の翌日から起算して三月を経過する日と当該更正があった日の翌日から起算して一月を経過する日とのいずれか早い日の翌日とし(右同項二号)、右更正の請求に基づかない場合は更正があった日の翌日から起算して一月を経過する日の翌日とするものであり(右同項四号、同法施行令六条の一五第一項一号)③ただ、個人住民税(所得割額)については、賦課徴収制をとってはいるが、個人住民税のうち所得割額は、国の所得税の確定手続と必須的に連動する関係をとっていることから、賦課決定により納付するに至ったものについてもそれが所得税の申告納付に係るものであれば、後に所得税の減額更正により個人住民税も減額されて過納金となったような場合は、実質は、申告書の提出により納付した地方団体の徴収金につき生じた過納金とみられるところから、この場合は、特に右同項三号で、還付加算金の起算日は、右所得税の減額更正の通知のなされた日の翌日から起算して一月を経過する日の翌日とし、④最後に、右以外の過納金、誤納金については、すべて同法施行令六条の一五第一項二号で、納付、納入のあった日の翌日から起算して一月を経過する日の翌日と、各規定するに至っているものとみられる。

2、そして、このような改正の経過、内容に照らし、本件関連条文を検討してみるに、被告は、本件過納金となった法人市民税は、原告が地方税法三二一条の八第三項による申告に基づき納付したものであって、被告の更正、決定等によるものではないから、同法一七条の四第一項一号には該当しないという。しかしまず、同法三二一条の八第三項の申告の実質的な意味についてはさらに考えてみる必要がある。同申告は、法人市民税については個人の場合と異なり申告納付制をとっていることによるものではあるが、法人市民税のうち法人税割額は法人税法所定の法人税額を課税標準とするものであって、法人税の申告書の提出と同期限内にその申告法人税額を課税標準とする法人市民税の申告書をも市町村長に提出すべきものとしており(地方税法三二一条の八第一項)そしてまた、国の税務官署により右法人税額が増額更正されたような場合には、当然これに応じ右法人市民税(法人税割額)も連動的に増額変更されることとなるが、この場合も、納税者は市町村長に対し右法人税額の更正に応じた法人市民税の修正の申告書を提出すべきものとされているのであって、いわば、右法人市民税に関する申告は、それ自体は国の法人税額の確定手続に依拠する自主性のない義務的なものともいえる。本件の場合、国の法人税額が増額更正されたことに伴い、原告は、これに応じ右更正された法人税額を課税標準として法人市民税のうち法人税割額を計算し直し、被告に同修正の申告をなして納付に至っているというのであるから、右申告は形式的なものにすぎず、実質は、右国の法人税額の更正に起因して右納付に至ったものであって、国と市とを一体的にみてこれについて生じた過納金は、むしろ、地方税法一七条の四第一項一号所定の「更正、決定等により納付した地方団体の徴収金に係る過納金」と解するのが相当なようにもみえる。

この点は、かりに被告主張のごとくとし、地方税法三二一条の八第三項の申告により納付した場合の過納金は同法一七条の四第一項四号による同法施行令六条の一五第一項一号所定の「申告書の提出により納付すべき額が確定した地方税に係る過納金」に該ると解するとしたら、法律に従って申告納付した者が同申告を怠って職権で法人市民税の増額更正(同法三二一条の一一)を受け納付するに至った者に比し、却って還付加算金の算定につき不利益を甘受すべきようなことともなり(右申告を怠ったことにより延滞金等を支払うこととなるが、これも結局還付の対象となる)課税上不公平の観を免れないともいえる。

3、これらのことはさらに、所得税と個人市民税との関係に関する還付加算金の規定(地方税法一七条の四第一項三号)と対比してみるとなお明らかとなる。この規定は、所得税が減額更正されたことに伴い個人市民税も減額されることとなった場合の過納金に関するものであるが、右所得税の減額更正は「申告書又は修正申告書の提出によって納付すべき額が確定した所得税額につき行われた更正に限る」ものであることを右同号括弧書で特に文言上明らかにしていて、つまり、所得税の増額更正を受けたことに伴い個人市民税につき増額の賦課決定を受けて納付したものについては、それが後にさらに所得税の減額更正を受けたことに伴い個人市民税も減少することとなったような場合の過納金については、右一号に該当し、右納付の日の翌日から還付加算金を起算すべきものとしている。このことは前記法人市民税につき述べたところと同旨の趣意を右個人市民税の規定で明らかにしているものといえる。

かように、右改正の経過に照らし、還付加算金に関する関連条文を検討してみると、たしかに、実質的にみると被告主張のごとき解釈には多くの不合理性を否めない。しかしながら、他面、前記地方税法の昭和四四年法律第一六号による改正の立法上の趣旨についてみるに、これが地方税法三二一条の八第三項の申告により納付した法人市民税に係る過納金の還付加算金の計算についても、これが申告納付に係るものとして同法一七条の四第一項四号同法施行令六条の一五第一項一号に該当し、同法一七条の四第一項一号に含まれないものであるとした趣旨であることは、右各関連規定の文言上の理解のほか、地方税法が個人市民税については賦課徴収制をとっているのに対し法人市民税については申告納付制をとっていること、地方税法一七条の四第一項三号が、個人市民税につき賦課徴収制をとっているためとはいえ、実質的に法人市民税と同じような関係にあるとみられる個人市民税についてのみ特に規定を設けていること、昭和五〇年法律第一八号による改正で地方税法一七条の四第一項一号に、同法三二一条の八第三項により申告納付に係るものも含ましめることを明定したが、その改正法律附則三条では「改正後の地方税法一七条の四第一項の規定は昭和五〇年四月一日(施行日)以後に還付のため支出を決定し、又は充当する過納金に加算すべき金額について適用し、施行日前に還付のため支出を決定し、又は充当した過納金に加算すべき金額についてはなお従前の例による。」として、右改正前の規定による取扱いは右改正後の規定によるそれと異なることを前提としたとみられるような経過規定を定めていること、などに照らし明らかなものといえる。もっとも、立法の条文上現れた意図に反してでもなお合理的解釈を試みなければならないような場合のあることは、その不合理性の度合に応じては全くないともいえないであろう。しかし本件の場合、法人市民税の確定、納付手続に個人の場合と異なり申告納付制をとっていることは、全く納税上の形式にすぎないともいえず、法人と個人の納税主体(計算、納付)としての一般的性格の相違に着目したものとみられるし、また地方税法三二一条の八第三項の申告にしても、実質は法人税額の更正に由来するものとはいえ、真実所得額を争うべき場合であれば、その自主的な判断により右更正処分に異議申立をなして右修正申告もしないでおく可能性も全くないわけでもないのであるから、法人と個人を区別し、また、同申告による納付を、他の一般自主申告により納付した場合と同一視して扱うとしたことにも全く理由がないわけでもない。

そしてまた、元来、過誤納金の還付および同還付加算金請求の関係は、すでに前敍のとおり実質は不当利得返還請求の関係にあるとみられるところ、還付加算金の計算利率年七・三パーセントは、延滞税の利率に見合うものではあろうが、右利率のうち民法上の悪意の受益者の返還義務の場合の利率年五パーセントを超える範囲は延滞税との均衡をはかるなどのための立法上の措置にすぎないともみられ、還付加算金の請求が認められないとしても民法上の不当利得一般の法理に従った個別の不当利得返還請求の途は鎖されないと考えられることからすると、ある期間、特に右還付加算金の請求が否定される立法がなされたとしても、その立法の現われた意図に反してまでこれが解釈によって是正しなければならない程のこととも考えられない。

このようなことからすると、結局、本件については、還付加算金の計算につき被告が地方税法一七条の四第一項四号同法施行令六条の一五第一項一号に従い計算すべきものとし、同法一七条の四第一項一号に従い納付の日の翌日からとして計算した第一次充当通知による処分の取消の処分をなしたことは法令の解釈上やむをえないところであって、この解釈適用に誤りがあるともいえないこととなる。

三、なお原告は、本件還付金の基になった法人市民税の減額更正処分は地方税法三二一条の八の二による更正の請求に基づきなされたものである旨主張しているが、たしかに《証拠省略》によると、右減額更正処分は、右更正の請求に基づきなされたものと認められなくもない(取消は減額更正の一種と解せられる)。しかし、この点はかりに右更正の請求に基づくものとしても、その場合には同法一七条の四第一項二号が適用され、本件還付加算金の計算上は結論になんら差異は生ぜしめない。

四、そうだとすると、右説示したところから結局、還付加算金に関する第一次充当通知による処分を取消した本件処分には、原告主張のごとき違法はないといわざるをえず、したがって、右取消を求める原告の本訴請求は理由がないから失当としてこれを棄却すべきものとし、訴訟費用の負担につき民訴法八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 渡辺伸平 裁判官 平湯真人 田中澄夫)

別表《省略》

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